ビザのあれこれ 〜宿敵!!DS-2019を手に入れるまで〜
こんにちは。岡村です。
前回はJ-1ビザについて書きましたが、今回はJ-1ビザを取得する前に最も重要な書類DS-2019を紹介します。
J-1 vs H1Bについてはこちら。
doctor-hummingbird.hatenablog.com
DS-2019とは留学先が発行する正式な就労許可証です。
こちらがDS-2019の現物(岡村ver.)です。
僕は、このDS-2019をゲットするまでに、必要書類を提出してから正味6ヶ月かかりました。毎月のように確認メールを送り、最後の3ヶ月は1〜2週間に1回のペースで確認メールを送りましたが、届くまでに時間を要しました。
施設によってはスムーズな場合もあるようですので、この辺は秘書さんの頑張り次第のようです。
なお、DS-2019が発行される直前にはbackground checkなるものがありました。
他施設ではどうなのかは不明ですが、オンラインでアンケート調査のようなものを入力する作業でした。
background checkを入力後、数日でStanfordの承認が下りて、晴れてDS-2019が正式に発行されるという流れでした。
いざDS-2019がFedExで届いて開けてみると...
子供の名前に記載ミスがありました(衝撃)!!!!
急遽、秘書さんに連絡をして、修正して再度送り直してもらったこともあり、余計に時間がかかりました。
DS-2019は渡米後も事あるごとに、提出を求められますので、記載ミスがあったら「なんとかなるだろう。」とは思わずに、必ず修正してもらいましょう!!
ちなみに、留学までの準備や秘書さんとのメールのやりとりなどは、大谷隼一先生の「ただいま留学準備中 医師が知るべき留学へのコンパス」が大変参考になりました。
話が遡りますが、そもそもDS-2019を発行してもらうために必要な書類は、僕の場合、以下の通りでした。
・パスポートのコピー(家族全員)
・家族全員の生年月日・出生地
・留学先での研究の概要(1〜2行にまとめる。研究のタイトルみたいなもの。)
・CV(履歴書)
・Letter of recommendation(推薦状)1通
CVやLetter of recommendationについては、ネットで検索するとsampleがたくさんあったので、それを参考にして作成しました。
またLetter of recommendationは、自分で作成して、英文校正に出した上で、医局の教授にお願いしてサインしてもらって準備をしました。もちろん教授が書いた体裁になっています。
今日はこの辺で。
ビザのあれこれ〜J-1よりもH1Bがいい??〜
こんにちは。岡村です。
巷は、ハローウィーンとAirpods proの発売でざわついているようですが、御構い無しに留学の話をしたいと思います。
今日はビザについて少し書きたいと思います。
その前にまず、アメリカで日本人医師が働くのに、どういうパターンがあるか考えてみました。
パターンとしては以下の3つが多いと思います。
・学生〜研修医までにUSMLEをstep1, step2CK, step2CSまでpassして(渡米してからでも良いからstep3も)、各種レジデンシープログラムに正規で入るという兵。
・医師7〜10年目くらいまでにUSMLEをpassして(可能なら渡米前にstep3まで)、フェローのポジションで渡米する。
・僕のように無資格の場合は、なんとか研究のポストを見つけてリサーチャーとして渡米する。
上2つを考える場合、言わずもがな、USMLE受験が必須です。
研究ポストの場合、いつかは必ず帰国しなければなりません。
USMLEは、step1, CK, CSまでとればECFMG certificateが発行されますので、多くの施設で働くことが可能になります。。。
が、この場合Visaは往々にしてJ-1Visaになります。
(そもそもVisaというのは、働く施設がsupportしてくれるかどうかで決まるので、奇跡的にCSまででもH1Bをsupportする施設はあるのかもしませんが、僕が知る限りそんな人いません。)
step3までpassした場合のメリットは、H1Bをsupportしてくれる施設が増えることです。
step3を取得していても施設によってはJ-1を提示してくることがあると思いますが、その場合は全力でゴネたほうがいいです。
かくいう僕は、そもそも研究留学で無資格ですので、J-1で入国しています。
では次に、何故J-1よりもH1Bが良い?のか考えてみます。
何故J-1よりもH1Bが良い?
その①
まずはじめにJ-1ビザの''two year rule''が原因だと思います。
ネット記事を読んでいて誤情報が散見されたので確認ですが、J-1ビザにおける''two year rule''=''2年で帰国しなきゃいけない''は誤りです。
正しくは、
two year ruleとは、プログラム終了後に自国または渡米前に居住していた国に、少なくとも2年間居住しなければ移民ビザ、婚約者ビザ、短期就労ビザまたは企業内転勤者ビザが発行されない。
というルールです。
つまり、帰国後に2年間は自国に滞在しないと、もう一回渡米できないですよー、という縛りのことです。
正確な情報は常にアメリカ大使館ホームページや各種アメリカのサイトを探すほうが情報が正確ですので、まずはこちらを参照してみてください。
そして、さらに重要なことは
two year ruleはJ-1ビザの全員に適応される訳ではありません!!
これも結構、皆さんが知らない事実かと思います。
ちなみに僕のJ-1ビザは以下の通りです(赤枠に注目)。
では、two year ruleが適応される人とされない人の違いはなんでしょうか。
それは、ビザ申請のためにアメリカ大使館で面接を受けるときに、DS-2019(留学先から発行される就労許可証)のtwo year ruleの項目に面接官がチェックを付けるかどうか、で決まります。
実際に面接に行くと分かりますが、面接官がチェックボックスにチェックを入れるのを目の当たりにします。
その時は、内心結構ヒヤヒヤしました。
付け加えますと、おそらく医師が研究留学する場合は、多くは対象にならないと思いますが、two year ruleが適応されている先生もいるので、僕には詳細な基準はわかりません。
何故J-1よりもH1Bが良い?
その②
DS-2019が基本的に1年更新で、多くの場合、毎年領事館に出向いてビザの更新手続きをしなければならない、ことがあると思います。
僕は、まだ渡米したばかりで聞いた話ではありますが、毎年領事館に行くのは面倒だなぁと思っています。
中には、1年で切れたJ-1ビザのまま滞在している留学生もいます。実際。
この場合、2年目以降にアメリカでの生活に支障はありませんが、万が一帰国しなければならない緊急事態(家族の不幸とか)があった際に、再入国ができなくなるという点でリスキーなのかなと思います。
DS-2019が2年更新の留学生もいるようですが、どうやって決まるのかは分かりません。
何故J-1よりもH1Bが良い?
その③
J-1ビザでアメリカ滞在中に、一時的に海外旅行に行く場合や日本に戻る場合、DS-2019に一筆サインをもらう必要がある、というのもJ-1が面倒な要因の1つです。
アメリカは移民国家ですので、各所属施設には必ずInternational officeみたいな部署(外国人を対応する部署)があると思います。
そこに出向いて、事務所のおじさんに理由を伝えて、DS-2019右下のTRAVEL VALIDATION BY RESPONSIBLE OFFICERという欄にサインしてもらう必要があります。
家族同伴の場合、家族全員のJ-2ビザにもサインをもらう必要があります。
1度もらえばDS-2019の期間内は何度でも海外に行くことは可能になりますが、DS-2019が基本1年更新で、普通は年に何度も海外に行く訳ではないので、結局のところ一時帰国の度にInternational officeに出向く必要があります。
何故J-1よりもH1Bが良い?
その③
J-1ビザでの滞在は、原則5年間が最大となる、ことも要因の1つかと思います。
こちらも↑を参照して頂ければと思いますが、
- Teachers, scholars, researchers, and professors – five years.
とあります。
しかも、僕が所属するStanford大学では、title(日本でいう肩書き。助教とか、大学院生とか。)によって大学がDS-2019を更新してくれるかどうかが決まる、と上司に言われました。
つまり、J-1だからって5年間必ず更新できるとも限らないんです。
僕は幸いVisiting Instructor(客員講師)というtitleなので、更新がしやすいらしいですが、よくあるPostdoctoral fellow(いわゆるポスドク)だと2年でバッサリと帰らされるそうです。。。
今日はこのへんで。
留学までの道のり〜あっという間に医師10年目になっていた人へ(僕のこと)〜
こんにちは、岡村です。
ところで、僕がレジデントの頃に留学に関して一番疑問に思っていたことは...
「そもそもコネも学もお金もないのにどうやって留学するんだろう」
ってことでした。
そこで、読んでくださっている方がもし(だいたい)医師6年目を過ぎていたら、なんなら既に僕と同様に医師10年目を過ぎている場合に、どうしたら留学に至れるのか考えてみました。
結論、留学したければ国際学会に参加しよう!
僕なりに考えた答えが国際学会への参加です。
もちろん、出来ればプレゼンがあるといいですし、学会期間を利用して近隣の有名施設に見学の申し込みをするのが良いと思います。
正直、日本国内の学会でいくら発表をしても、将来のキャリア形成においては、あんまり役に立ちませんし、留学のチャンスを得るのはかなり厳しいのかなと思います。
もちろん、日本国内とはいえ学会発表をすること自体を否定するわけではありません。
僕は、現在医師11年目で、今年で
American Heart Association(AHA)で3回
European Sociaty for Cardiologyで1回
International Heart and Lung Transplantation(ISHLT)で2回
European Association for Cardio-Thoracic Surgery(EACTS)で1回
Asian Society for Cardiovascular & Thoracic Surgery(ASCVTS)で1回
の計8回の発表をしました。
(日本国内での発表は地方会も含めると40〜50回はしたと思います。)
中でも僕が留学のチャンスを得たのは、2017年に参加したAHAの時でした。
その話は後ほどいたします。
国際学会に参加すると気づくのですが、日本人は発表内容そのものが劣っているということはありません。
ですので、普段日本語で書いている抄録を英語にするだけで、十分に国際学会に採択される可能性はあると思います。
もちろん、国際学会の抄録作成には、日本語以上にノウハウはありますが、このご時世たくさんのHow to本がありますので、まずは真似をしてみるところから始めれば良いと思います。
ちなみに、国際学会の抄録および発表において最も役立つ本は、東京大学呼吸器外科 佐藤雅昭先生のシリーズです。中でも「流れがわかる学会発表・論文作成How To」はオススメです。
流れがわかる学会発表・論文作成How To 改訂版 ―症例報告、何をどうやって準備する?
- 作者: 佐藤雅昭
- 出版社/メーカー: メディカルレビュー社
- 発売日: 2011/03/31
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 3回
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僕が今までに読んできたHow to本の中で、この本を超えるものはないと確信しています。本当にオススメです。
一方、日本人の英語は、他の英語を母国語としていない国の先生より圧倒的に劣っていると思います。。。かくいう僕も英語が苦手です。
それでも国際学会に採択されると...
→英語の練習を否が応でもすることになる
→実際発表すると、やっぱり英語力のショボさに泣きそうになる
→英語勉強しなきゃなーと思い帰国する
となりますので、少しずつですが英語に触れる機会が増えていき、帰国してからも英語を続けるモチベーションにもなります。ですので、国際学会の発表を継続することで英語力の向上にも繋がるのです。
さて、僕の留学までの経緯について少し書きたいと思います。
2017年にアナハイムで開催されたAHAで発表の機会を得た際に、発表だけではもったいないなぁと思い、カナダはトロントにあるSick Kids Hospitalとアメリカはカリフォルニア州にあるStanford Universityの手術見学をしてみようと思い立ちました。
各施設のホームページから、スタッフのメールアドレス宛にダメ元で手術見学のお願いをしてみたところ、2施設ともに快くOKをいただき、秘書さんを通じてたくさんの書類の提出やワクチン接種など色々ありましたが、なんとか見学することが出来ました。
Stanfordの見学の際に、スタッフの先生から
ス:「AHAの発表はどんな内容ですか?」と聞かれて
僕:「大学院の研究内容で、カクカクシカジカです。」って答えたら
ス:「2年後だったら研究のポストが空くと思うけど、ウチくる?」と言われたので
僕:即答で「行きます!」
と答えました。
この時点で口約束ではありますが、留学がなんとなく決まりました。
それから口約束を確約にすることも結構大変でした。
帰国後も豆にメールをして、その1年後にもう一度渡米して研究室に挨拶をしてラボメンバーに顔を覚えてもらい、ビザの準備や助成金の準備を進めていきました。
ところで、医師の留学の機会について少しだけ考えてみたいと思います。
僕の周囲の先生の様子や僕の経験から思うに、気力・体力だけでなく職場での立場・家族の状況などを考慮すると、30代〜せいぜい40代前半までの10年位が現実的な留学開始可能時期で、ほとんどの場合は人生に1〜2回しか訪れないのかなぁと思います。
そう考えると、留学って一期一会というかone chance, one makeというか、そのチャンスを逃した先生はもう次は来ないと思った方がいいのかなと思っています。
すでにUSMLEやIELTSをpassしている先生は、この限りではないと思いますが、僕のように凡人には人生で1回しか訪れない貴重な機会なのかなと思います。
今日はこの辺で。
岡村賢一、アメリカに渡る。
はじめまして。
岡村です。
私は、今年9月からアメリカはカリフォルニア州のとスタンフォード大学に研究留学に来た心臓外科医です。
よろしくお願いします。
アメリカ留学に至るまで色々困難もありましたし、こちらに来てからも英語力の至らなさが原因によるトラブルも勃発しております。
なので、アメリカにいるのにオンライン英会話を始めてみたり、
TED聴き始めてみたり、色々やっています。
そんな僕ですが、このブログでは僕が医者になって10数年で感じたことやアメリカ生活のセットアップで苦労したことなど、医師を目指す医学生やこれから留学を目指す若手医師に少しでも有益な情報を発信できたらと考えています。
今後、具体的には以下のような内容を書いていこうと思います。
・専門医のこと。
・大学院のこと。そもそもいく必要があるのか。「研究マインドが身につく」ってどいうことか。キャリアアップのためのあくまでツールなのか。
・外科医が大学院で得る物・失う物。
・学位を取った後に何か変わるか?
・統計学とはドラクエだ!?
・統計が出来るとタダで海外旅行が出来る!?
・統計ソフトあれこれ。
・どうやったら国際学会や英語論文に採択されやすくなるのか。具体例をあげて考えてみた。
・心臓外科に関して、日本のトレーニング状況と修練について。独断と偏見に満ちた意見。
・Challenrgers's Live Demonstrationsのススメ。
・Challenger's Live Demonstrationsの本戦に進むためには必要なこと。
・Challenger's Live Demonstrations本戦に4年連続出場した僕が語る本戦のリアル。
・心臓外科医にとっての臨床留学と留学先(国)のチョイスについて。
・臨床留学にはUSMLEが一番堅実なワケ。
・国際学会のあれこれ。演題の通し方とか参加にあたりマストアイテムとか。
・渡米前に日本で準備しておくべきこと。
・アメリカ生活のセットアップについて。家探し、車購入、Social Security Number申請、医療保険加入、クレジットカード作成、日用品の購入、自動車免許あれこれ等。
僕なりに役立つ情報をゆるーく発信していきたいと思います。
末長くよろしくお願い致します。